こんにちは!
前編ではオーストラリアの税制概要と、税率などについて解説しました。
後編では実際のタックスリターン(確定申告)の流れと、節税のポイントなどを解説したいと思います。
タックスリターン(確定申告)の仕組みと流れ
まず「タックスリターン」という言葉から、何だかお金が「戻ってくる」というイメージを持つかもしれません。
ですがタックスリターンの日本語訳は「確定申告」であり、それによってお金が戻ってくるという保証はどこにもありません。
前編で説明した「課税所得」から割り出した税額が、既に源泉徴収などで納めている額よりも少なければ差額が戻ってくる一方、逆であれば追加で不足分を支払わなければいけません。
「タックスリターンをすればお金が幾らか返ってくる!」
と短絡的に考えるのはやめましょう。
タックスリターンをするにはTFN (Tax File Number) が必要になります。
TFNはATO (Australian Taxation Office) のウェブサイトから、オンラインで申請できます。
身分証明書(パスポートなど)、就労が可能なビザ、そして住所証明などが必要です。
学生ビザやワーホリビザは制約はあるものの、オーストラリアで合法的に働くことのできるビザです。
オーストラリアに来た所でまだ住む所が見つかっていない、という方(例えばまだホテルやバックパッカーに住んでいて、家を探しているという状態の方)は郵便局のPO BOX(私書箱)を利用する手もあります。
通常、申請から28日以内に受け取ることができます。
タックスリターンには2つの期限があり、自分でやる場合には会計年度が終了した後の7月1日から10月31日までですが、税理士に頼む場合はこれを次の年の**5月15日まで引き延ばすことが出来ます。(**この期日は個々の状況などによって変わることがある為、税理士にきちんと確認しましょう)
さて、実際にタックスリターンをするには以下の2つの方法があります。
どちらの場合も、全ての勤務先からの給与明細(PAYGサマリー、Income Statementsなど)や銀行明細(利息収入)、投資などその他の収入に関するもの、控除可能な経費の領収書などを準備する必要があります。
myTaxは多くの情報が予め入力されており、後はガイドに従ってフォームに必要な残りの事項を入力するだけで完成します。
シンプルな申告の場合、数十分程度で完了することが一般的なようなので、ワーホリや学生、または正社員として勤務する会社員の方でも、特に複雑な申告でない限りmyTaxを利用してみると良いでしょう。
因みに僕は会社を経営しているので、個人としてだけでなく法人としてもタックスリターンをする必要があります。
自分で出来ないこともないのでしょうが、税理士に依頼しています。
もちろんお金は掛かりますが、疑問に答えてくれたり、アドバイスをくれたりするのでその価値は十分にあると思っています。
申請後は通常2週間程で、税金を払い過ぎていた場合は返金が行われ、追加で税金を納める必要がある場合は請求書が送付されます。
節税のポイント
節税に関してはグレーなものも含めて、様々なものがありますよね。
ですが結局の所は
いかに控除を最大化するか
ここに尽きます。
何を控除として請求できるか、またはできないかをよく理解して、合法的に控除を最大限に活用する必要があります。
オーストラリアでの税務上の経費控除に関しては、一般的にその経費が直接的に収入の獲得や維持に必要であり、個人的な性質のものでない場合なら認められます。
日本では、正社員として会社に雇用されている場合、基本的には会社が『年末調整』という手続きを通じて税金の精算を行います。
なので、確定申告をしたことがないという方も多いでしょう。
オーストラリアではこの点が大きく違っていて、例え雇われの身であろうとタックスリターン(確定申告)は自分でやらなけらばいけません。
僕はこの点は日本もオーストラリアを見習った方が良いと思います。
自分が支払う税金をきちんと知ることは大事ですからね。
「確定申告なんて面倒くさいわ〜」
そんな風に楽な方に流されていると、取られるだけガッツリと税金を取られて終わりますよ!
では、実際にどんな控除が利用可能なのでしょうか?
職種によって異なりますが、仕事で必要なツール(例えば、パソコンなど)は、しっかり経費として請求しましょう。
「仕事に必要なツール」とは、それ自体がないと仕事にならないものはもちろんのこと、仕事の効率を高める為のアイテムや、スキルアップの為のコースや書籍の購入も含まれます。
なので、日本人が英語環境で仕事をする場合、英語のスキルが現在の職業で明確に必要とされ、そのスキル向上が仕事のパフォーマンス向上や収入増加に直接寄与する場合は、英語のレッスン代も職業関連経費として請求することができます。
これはオーストラリアで働く日本人なら、ほぼ全ての人に当てはまるのではないでしょうか?
僕自身、過去に何度も英語のレッスンを受けたのですが、その費用を経費にできるとは知りませんでした。
皆さんは、忘れずにキッチリと請求しましょう!
更に携帯代やインターネットなど、通信費も仕事に関わる使用に関しては必要経費として認められます。
もちろん私用の部分は請求できませんので、実際仕事用にどれ位使っているのかを把握しておきましょう。
仮に携帯代が月に$50で、3割を仕事用に使っているとしましょう。
この場合、年間の携帯代$600に0.3を掛けた $180が請求可能な控除額になります。
可能な控除は全て利用する。
これは節税対策の基本です。
そして、経費控除の範囲が広いという点で、フリーランスや自分で会社を持って仕事をしている人は、正社員として雇われている人よりも有利です。
正社員として経験を積み、人脈も拡げたら、独立も視野に入れてみてはどうでしょうか。
当ブログでも何度か触れているスーパーアニュエーション(Super)
Superは雇用主が従業員に対して払う、給与とは別の年金制度です。
雇用主が払う額に加えて、自分でも任意の額をトータル$27,500/年まで積み立て可能。
これは Concessional (Before-Tax) Contributions と呼ばれ、これに掛かる税率は15%で、通常の所得税よりも有利な税率です。
更に「自分の給料から払う任意の額」が、収入から控除されることで、「課税所得」を減らすことができます。
注意点は、任意で積み立てるお金は、基本的にあなたが65歳になるまで使えないということ。
十分な収入があって、その分課される高い税率を避けたいという方には有効な方法でしょう。
スーパーアニュエーションに関しては、過去記事「お金の話 2」も一読してみて下さい。
コロナ禍によって増加した「在宅勤務」
ここでも下記のような項目を「経費」として計上できます。
- 電気代とガス代: 在宅勤務により増加した照明、空調、オフィス機器の電力消費に関する費用
- 電話とインターネットの費用: 在宅勤務に必要な通信費
- 消耗品: オフィス用品やプリンターのインクなど、消耗品の購入費用
- 家具やオフィス機器: デスクや椅子、コンピューターなど、在宅勤務に必要な家具や機器の購入や減価償却
在宅勤務経費を計算するための方法は、下記の2つ。
- 定額法(固定率法): 従業員は、在宅勤務に費やした時間に対して一定の金額(時給レート)を控除できます。この方法では、一時間あたりの控除額がATOによって定められています。
- 実費法: 実際に発生した経費に基づいて控除を行います。この方法では、経費とその使用の割合を正確に記録し、必要な書類(領収書や請求書など)を保管する必要があります。
今回の改訂で、「仕事部屋」といえるスペースがなくても在宅勤務経費が認められるようになりました。(you no longer need a dedicated home office)
なので仮にキッチンやリビングルームで仕事をしたとしても、認められることになります。(もし専用の仕事部屋を持っているなら、その分の家賃/ローン分を経費として計上可能)
注意点としては下記の2点。
- 個人的な使用分は控除できない: 在宅勤務経費を控除する際は、仕事に関連する部分のみが対象です。個人的な使用分については控除できません。
- 記録の保持: 控除を申請するには、在宅勤務の時間や発生した経費に関する記録を保持する必要があります。これには、作業日誌や領収書、請求書などが含まれます。
最後に投資用不動産を持っている、または考えている人の為に「ネガティブギアリング」について説明します。
ネガティブギアリングは、オーストラリアの不動産投資においてよく利用される節税戦略で、投資物件に関連する経費がその物件から得られる収入(例えば、賃貸収入)を超える場合に適用されます。
この「ネガティブ」な差額(損失)を他の収入源から得た所得に対して控除することで、全体としての課税所得を減少させ、結果的に納税額を軽減することができます。
オーストラリアの不動産は今の所、ずっ〜と上昇傾向。
「お金の話1」でも書いたように、僕も過去に不動産投資を考えたことがあります。(結局、株投資から始めることにしましたが)
シドニーやメルボルンなど、価格が高過ぎて不動産なんて買えない!という方も、「投資用」ということでオーストラリア全体に目を向ければ、まだまだ可能性は考えられるでしょう。
2032年にオリンピックが開催されるブリスベンや、南オーストラリア州の州都アデレード、更にはタスマニアなんかも狙い目かもしれません。
なお、この「ネガティブギアリング」には正しい知識やきちんとした戦略が不可欠なので、会計士や税理士に相談することをお勧めします。
最後に
今回は「オーストラリアで稼ぐ」ことに不可欠な、この国の税制度について解説しました。
先述したように、日本で会社に勤めている以上、税金については漠然とした知識しかないのではないでしょうか?
僕もそうでした。
それが変わったのはオーストラリアに来てから、特にフリーランスとして独立してからでした。
繰り返しになりますが、自分が支払う税金についてきちんと知ることは重要です。
今回の記事が、皆さんのオーストラリア生活に少しでも役立てば幸いです!
参考までに、ATOのリンクを貼っておきます。
Tax in Australia: what you need to know
ではまた!
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